--新型コロナウイルスが重くのしかかった
「グローバルに事業を展開する総合商社にとっては大きな影響が出た。まず、顧客とのコミュニケーションが極めて難しいものとなっている。(オンライン会議などの)リモートでできることも多いが、直接顔を突き合わせてのやり取りが大切だと実感した。今まで取引がある顧客とはリモートでのやり取りでもなんとかなっているが、新たな顧客や取引先との関係構築は難しい。今まで作ってきた関係性の『貯金』を食いつぶしているというのが実感だ。また、出社しないことが続くことで、社員が不安を感じることもあり、心身を含めた健康面が課題だ。社員教育もリモートの画面越しだけでは不十分。職場でやり方をまねたりして学んでいくことが重要だということも再認識した」
--今後の対処は
「経済に対するコロナの影響は劇症性が大きく、大きな関心となっている。同時に、米中の対立構造やデジタルトランスフォーメーション(DX)なども大きな問題と認識している。危機は、破壊的な変化をもたらし、既存のビジネスをないものにしてしまう恐れがある一方、大きなビジネスチャンスをもたらす。脅威とチャンスの双方を受け止めて、次のビジネスを起こしていくことが必要だ。中期経営計画では足元、近い将来のビジネスの拡充と同時に、長期をにらんでの『ホライゾン3』を進めており、それによって必要とされる企業であり続ける」
--DXへの取り組みを強化している
「デジタル対応自体が目的となってはならない。デジタルはあくまでもツールの一つだ。顧客が気付いていないことや、新たな要望に応えるための提案を、スピードアップさせるためのものだ。デジタルを活用して新たなビジネスを起こしていくことが最も重要だ」
--テレワークなどで働き方も変化する
「課題があるのは事実だが、リモートによって一定の意見交換は可能だ。特に今までは、海外出張しなくてはならなかった案件でも、ある程度はリモートの会議などで対応できることがわかり、効率は上がっている。また、全員が出社しなくてもいいことも分かった。利便性を重視しながら、臨機応変に、出社とリモート勤務をベストミックスさせるべきだと考えている。そのために人事制度も刷新した。『ミッション制』という形態で、上司とやるべきミッションを事前に合意して、その結果に応じて評価するものだ。クリアすれば、ボーナスの査定や次のミッションへの挑戦などに反映させる取り組みだ」
【プロフィル】柿木真澄 かきのき?ますみ 東大法卒。1980年、丸紅入社。執行役員電力?インフラ部門長、常務執行役員、丸紅米国会社社長、丸紅専務執行役員、副社長などを経て、19年4月から現職。鹿児島県出身。